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第6章 2節

IPアドレスとルーティング

通信を行うためには、データの送信先を識別するための「アドレス」と「経路選択」が必要です。インターネットでは「IPアドレス」が機器に割り当てられ、送信されたデータ(パケット)は「ルーター」によって目的地へ順次転送されます。その仕組みを学びましょう。

1. ネットワーク上の識別子:IPアドレス

IPアドレス(IP Address)は、インターネットに接続されているすべてのコンピュータやスマートフォン、サーバーに割り振られる一意のアドレス(識別子)です。

IPアドレスには、現在主流のIPv4と、新しいIPv6の2つの規格があります。

  • IPv4(IP version 4): 32ビットの整数でアドレスを表現します。192.168.1.1 のように、0〜255の数字を4つドットで区切って表記します。表現できるアドレス数は約43億個($2^32$)ですが、接続機器の増加に伴い、アドレス不足(枯渇問題)が発生しています。
  • IPv6(IP version 6): 128ビットの整数でアドレスを表現します。これは膨大な数の機器を識別するための仕組みであり、IPv4のアドレス不足に対応するために移行が進められています。

2. グローバルIPとプライベートIPの違い

すべての機器に個別にグローバルなIPアドレスを割り当てると、アドレスが不足してしまいます。 そこで、IPアドレスは用途別に大きく2つに分けられて運用されています。

種類 割り当て範囲 特徴
グローバルIPアドレス インターネット全体 世界中で絶対に重複しない一意のアドレス。インターネット上のサーバー等に割り当てられます。
プライベートIPアドレス 家庭や会社などの組織内のみ 組織の内部だけで自由に使用してよいアドレス。例えば、あなたの家のスマホとPCは、組織内(自宅LAN内)でこのプライベートIPを使用しています。

家庭のルーターは、外部のインターネットと通信する際、複数のプライベートIPを1つのグローバルIPに自動で変換する技術(NAT/NAPT)を使うことで、IPアドレスを節約しています。

3. データを細切れにする「パケット(Packet)」

インターネットでデータを送る際、数メガバイトある写真や数ギガバイトある動画ファイルをそのまま一つの塊として回線に流すことはありません。なぜなら、1台のPCが巨大なファイルを送り続けている間、他のPCが回線を使えなくなってしまうからです。

そこで、データは送信しやすいように、通常1,500バイト程度の大きさに分割して送信されます。この分割されたデータ単位のことをパケット(Packet)と呼びます。

各パケットの先頭には、送信元IPアドレスと宛先IPアドレスが書かれた「送り状(IPヘッダ)」が貼り付けられます。

4. ルーターによるバケツリレー:ルーティング(Routing)

宛先が書かれたパケットは、どのようなルートを通って目的のサーバーにたどり着くのでしょうか。 インターネットは、多数のネットワークがルーター(Router)と呼ばれる中継機器で網の目のように繋がってできています。

パケットが目的地まで運ばれる仕組みは、各ルーターによる「順次転送」です。

PC (送信元) ルーター A ルーター B ルーター C ウェブサーバー (宛先) パケット
図 6-3:ルーター間の連携によるパケットの順次転送(ルーティング)モデル
  1. PCから送信されたパケットは、まず家庭や会社のルーターに届きます。
  2. ルーターは、パケットに貼られた「宛先IPアドレス」を読み取ります。
  3. ルーターの内部にあるルーティングテーブル(経路決定表)という道案内マップを参照し、「このIPアドレス宛なら、隣のルーターBに渡すのが最短だ」と判断し、Bにパケットを転送します。
  4. パケットを受け取ったルーターBも同様の判断を行い、次のルーターや設備へ順次転送します。
  5. これを繰り返すことで、パケットはネットワークを経由し、目的地であるサーバーへ到達します。

このルーティングの特徴は、仮に途中の通信経路で障害が発生しても、ルーターが自動的に別の経路へと迂回させてデータを届ける、耐障害性を持っている点にあります。

次のセクションでは、ルーティングされたパケットが途中で消失したり順序が入れ替わったりした際、通信の状況を監視してデータを組み立て直す「トランスポート層(TCP)」の仕組みについて学びます。